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最高裁判所第二小法廷 昭和30年(あ)600号 決定

主文

本件各上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人らの負担とする。

理由

被告人南の上告趣意は、事実誤認、被告人両名の弁護人中村登音夫の上告趣意は、原審で主張も判断もない事項であるばかりでなく、証拠能力のない旨の単なる刑訴法違反の主張であって何れからしても不適法な上告理由であるところ、所論山本の捜査機関に対する供述調書(否認)は刑訴三二二条に該当しないとはいえないし(本件が犯罪によるものであることは否定しているが本件船舶沈没事故があったという外形的事実を承認した点では不利益であり、且つ任意性は争われていない。)、その他相被告人の供述調書は、公判廷における夫々の供述と大綱においては一致しているが、供述調書の方が詳細であって、全く実質的に異らないものとはいえないのであるから、同三二一条一項二号の要件をも満たしているということができるから、刑訴法上の違反も存しない。また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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